article_image

耐久性に優れたLCカラムと 費用対効果の高い内部標準による アクリルアミド分析の改善

食材を焼く(網焼き,オーブン焼きなど),炒める,揚げる,など高熱調理の過程で糖類とアミノ酸であるアスパラギンが反応すると,食品中にアクリルアミドが形成される可能性があります。アクリルアミドの発生や濃度がかかわってくる商品例としては,ポテトチップス,穀類を原料とする焼き菓子,コーヒーなどがあげられます。食品中のアクリルアミドの検出は,スウェーデン国立食品庁によって2002年に初めて報告され,それ以来,食品や飼料に由来するさまざまな食品の汚染規模や,食事からの暴露に関連する潜在的な健康影響をより理解するための世界的な取り組みが拡大しています。アクリルアミドは非常に危険な化学物質として分類されており,実験動物では大量投与によりがんを引き起こす可能性が指摘されています(ただし,これまでのところ,食事による暴露とヒトの癌発生率の増加との直接的な関係は証明されていません)。公衆衛生維持のために,食品や飲料中のアクリルアミド濃度を正確に測定できる,効率的な測定法が必要とされます。ここでは,従来のアクリルアミド分析手法を,Allure Acrylamideカラムと重水素化内部標準物質を用いて改善したプロセスと比較します。分析時間の短縮とシステム適合性を逸脱することのない長期間にわたるサンプルスループットも利点となります。

現行の分析手法

LC-MS / MS法の選択

食品マトリックス中の正確なアクリルアミド分析には,技術的な課題があります。アクリルアミド分子は小さく,比較的揮発性が高い化合物であるため,当初はGC/MSによる手法が追求されました。しかしこれらの手法は,望ましくないステップである,アクリルアミドの臭素化誘導体への変換に依存するものでした[1]。その後,LC-MS/MSを用いた手法が研究され,現在では食品サンプルのアクリルアミド分析に日常的に使用される最も一般的な分析法となりました。LC-MS/MSメソッドは依然として分析のハードルに直面しています。中でも注目すべきは,アクリルアミドの選択的な保持と複雑なマトリックスから共抽出された化合物からの分離で,現在も研究が進められています。

多孔質グラファイトカーボン(PGC)LCカラムの使用

ヨーロッパでは,食品中のアクリルアミドの分析方法が正式に定められており(EN 16618:2015),多孔性グラファイトカーボン(PGC: porous graphitized carbon)を充填したガードカラムと分析カラムの使用が求められています。一部では従来の逆相(RP)保持メカニズムを用いるとアクリルアミドを分析することが難しいためです。比較的厳密なEN法によるサンプル前処理手順を行った後でさえ,共抽出される可能性があるマトリックス成分からアクリルアミドを分離するのに充分な保持が得られるため,PGCカラムは現在業界では一般的に使用されています。PGCカラムは,水系100%移動相で使用可能です。この条件では多くの逆相カラムが「Dewetting」と呼ばれる保持時間が極端に短くなる現象を起こし,有機溶媒の割合の高い移動相での時間のかかる洗浄によるカラム再生が必要になります。

重水素化内部標準物質の利用

正確な定量が必要不可欠ですが,抽出プロセスではかなりのばらつきが生じる可能性があるため,ENメソッドでは内部標準物質を抽出溶媒と共にサンプルへ添加することが推奨されています。通常のアクリルアミド分析には13C標識内部標準物質を使用しますが,EN法では代わりに重水素化内部標準物質の使用が可能となっています。13C標識アクリルアミドよりも大幅に安価なアクリルアミド-d3は内部標準物質として優れ,かつ費用対効果の高い選択肢です。

メソッドの要件

メソッド EN 16618:2015 の合計分析時間は8分です。システム適合性の要件を満たすために,アクリルアミドは1.7分より後に溶出する必要があります。さらに、ENメソッドに記載されている2段階のサンプル前処理工程後でもサンプル溶出液中に残留しているマトリックス成分をカラムから洗い出すため、アクリルアミド溶出後に追加時間が必要です。マトリックス成分はPGCカラムに強く保持されるため,分析毎に充分な置換を行わないとカラム性能が低下し,システム適合性の要件である保持時間1.7分を満たすことができなくなる可能性があります。

逆相分析によるサンプルスループットの向上

PGCカラムの使用するラボではシステム適合性の閾値に近づくと,システム適合性基準を満たす性能に復帰することを期待して長時間におよぶカラム再生の手順を実施するか,ガードカラムと場合によっては分析カラムも交換するかの選択に直面します。どちらも時間と費用のかかる問題であり,サンプルスループットが滞ります。 Allure Acrylamide カラムへの切り替えは優れた代替手段です。独自の極性基を組み込んだアクリルアミドを保持する逆相固定相は,水系100%移動相条件に適合し,PGCカラムよりも短い分析時間と長いカラム寿命を提供します。 Allure Acrylamide ガードカートリッジと分析カラムを使用すると,ENのシステム適合性要件を満たす充分なアクリルアミドの保持を提供します。一方で,共抽出されたマトリックスは分析毎に短時間でカラム洗浄ができないほど強く保持しません。その結果, Allure Acrylamide カラムを使用するラボでは,より少ないカラム本数でより多くのサンプルを分析できます。これは,あらゆる食品分析機関にとって強力なコスト節約の組み合わせです。次の例は,多検体を取り扱う食品検査機関における,重水素化内部標準物質とともに Allure Acrylamide カラムとガードカートリッジを使用する利点を示しています。

短時間分析

マトリックス化合物は Allure Acrylamideカラムから迅速に溶出するため,最適条件下で運用したPGCカラムよりも素早く平衡化し次の分析に備えることができます。図1は2つの異なるメソッドの例を示しています。1つはAllure Acrylamideカラムを,もう1つは代表的なPGCカラムを使用しています。PGCカラムを用いた手法では,依然として最善のカラム洗浄と平衡化の時間をとりながらも,分析時間を8分から7分に短縮することで,ENメソッドをさらに最適化しました。さらに洗浄しても,カラムの耐久性に大きな向上は見られませんでした。 Allure Acrylamideカラムによるアクリルアミド分析は,マトリックス成分から良好な分 離で1.7分の保持というメソッド要件を満たしならがも,平衡化時間ははるかに短くなりました。 EN 16618:2015 と比較して1分析あたり2.5分,最適化したPGCカラムメソッドと比較しても1.5分の短縮となるため多くのサンプルを分析でき,ラボの生産性が向上します。

図 1: ポテトチップスのような複雑なマトリックスの場合でも平衡化にかかる時間がPGCカラムよりはるかに短いため,Allure Acrylamideカラムを使用することでサンプルスループットを増加することができます。

PeaksConc.
(ng/mL)
PrecursorProduct
1.Acrylamide-d3 (IS)20075.158.1
2.AcrylamideEndogenous72.155.1
Comparison: Acrylamide Extracted from Potato Chips on an Allure Acrylamide Column vs. a Porous Graphitized Carbon Column
LC_FS0532
ColumnSee notes
Temp.:22 °C
SampleAcrylamide-d3
Diluent:Water
Inj. Vol.:10 µL
Mobile PhaseA. 0.001% Formic acid in water, B. 0.001% formic acid in acetonitrile
Flow:0.4 mL/min
DetectorMS/MS
Ion Mode:ESI+
Mode:MRM
InstrumentHPLC
NotesExtracted per EN 16618:2015

Weighed 2.0 g of homogenized potato chips into a 50 mL centrifuge tube. Added 40 mL water followed by the addition of internal standard. Shook by hand for 30 sec, by vortexer for 15 sec, and then on a mechanical shaker for 60 min set to maximum sample extraction agitation. Centrifuged in a refrigerated centrifuge at 10 °C, 3600 x g for 20 min. Removed the aqueous layer after centrifugation, taking care to avoid the top, fatty layer, or the solids at the bottom of the tube. Placed the aqueous extract in an appropriate container.

For cleanup, the first SPE cartridge (multimode SPE column with nonpolar, SAX, and SCX properties, 1000 mg/6 mL) was conditioned with 3 mL methanol and x2, 6 mL aliquots of water. Passed 10 mL of the aqueous extract through the column and collected eluate. For the next cleanup step, the second SPE cartridge (crosslinked polystyrene/poly-DVB SPE column, 500 mg/6 mL) was conditioned with 5 mL methanol and 5 mL water. Passed the eluate from the previous step entirely through the column. Rinsed the loaded cartridge once with 4 mL water and discarded the rinsing solvent. Eluted the acrylamide with 2 mL of 60% methanol in water. Collected the sample and transferred into an evaporation tube. Placed the tube in an evaporator at a temperature no higher than 40 °C to remove the methanol. Evaporated until the final volume was 0.5–0.8 mL using a gentle flow of nitrogen. Transferred the final sample into an autosampler vial and analyzed by LC-MS/MS.

Column Details
A. Allure Acrylamide column: 5 μm, 50 mm x 2.1 mm ID analytical column (cat.# 9167552) with 5 μm, 10 mm x 2.1 mm ID guard cartridge (cat.# 916750212).
B. Porous graphitized carbon column: 5 μm, 50 mm x 2.1 mm ID analytical column with 5 μm, 10 mm x 2.1 mm ID guard cartridge.

Mobile Phase Gradients (%B)
A. Allure Acrylamide column: 0.00 min (0%), 1.00 min (0%), 2.00 min (90%), 2.01 min (0%), 5.50 min (0%), flow = 0.4 mL/min.
B. Porous graphitized carbon column: 0.00 min (0%), 1.70 min (0%), 2.70 min (90%), 2.71 min (0%), 7.00 min (0%), flow = 0.4 mL/min.

優れた耐久性

図2は,代表的なPGCカラムと比べてAllure Acrylamideカラムではアクリルアミドの保持時間が非常に安定していることを示しています。PGCカラムでは,EN 16618:2015に従って抽出しクリーンアップしたコーヒーサンプルの注入を開始してすぐに保持が弱くなりはじめ,475回注入すると最終的にシステム適合性の要件である1.7分の保持時間を満たすことができなくなりました。対照的に,1000回の注入後でさえ,Allure Acrylamideカラムの性能は安定しており,次の分析に対応する準備ができています。 図3では,Allure Acrylamideカラムは分析初回から1000回注入後もクロマトグラフィーは影響を受けないことを示しています。共抽出されたマトリックス化合物を強く保持するのではなく溶出できることは,カラムメンテナンスをほとんど行わずに,数百回もの繰り返しマトリックス注入後でも非常に安定した性能をもたらす秘訣となります。

図 2: 2:Allure Acrylamideカラムは,1000回注入後でもEN 16618:2015システム適合性の要件を満たしています。これは,一般的なPGCカラムの2倍以上の注入回数です。

Allure Acrylamide column still meets EN system

図 3: システムメンテナンスやガードカラムの交換を行わずにコーヒー抽出物を1000回注入した後でも,Allure Acrylamideカラムの性能は変わりません。

PeaksConc.
(ng/mL)
PrecursorProduct
1.Acrylamide-d3 (IS)20075.158.1
2.AcrylamideEndogenous72.155.1
 Lifetime Test: EN16618:2015 Coffee Extract on Allure Acrylamide (1000th Injection)
LC_FS0533
ColumnAllure Acrylamide (cat.# 9167552)
Dimensions:50 mm x 2.1 mm ID
Particle Size:5 µm
Pore Size:60 Å
Guard Column:Allure Acrylamide 10 mm, 2.1 mm ID, 5 µm (cat.# 916750212)
Temp.:22 °C
Sample
Diluent:Water
Inj. Vol.:10 µL
Mobile Phase
A:0.001% Formic acid in water
B:0.001% Formic acid in acetonitrile
Time (min)Flow (mL/min)%A%B
0.000.41000
1.000.41000
2.000.41090
2.010.41000
5.500.41000
DetectorMS/MS
Ion Mode:ESI+
Mode:MRM
InstrumentHPLC
NotesExtracted per EN 16618:2015

Weighed 2.0 g of ground coffee into a 50 mL centrifuge tube. Added 5 mL n-hexane and 40 mL water followed by the addition of internal standard. Shook by hand for 30 sec, by vortexer for 15 sec, and then on a mechanical shaker for 60 min set to maximum sample extraction agitation. Centrifuged in a refrigerated centrifuge at 10 °C, 3600 x g for 20 min. Removed the aqueous layer after centrifugation, taking care to avoid the top, hexane layer, or the solids at the bottom of the tube. Placed the aqueous extract in an appropriate container.

For cleanup, the first SPE cartridge (multimode SPE column with nonpolar, SAX and SCX properties, 1000 mg/6 mL) was conditioned with 3 mL methanol and x2, 6 mL aliquots of water. Passed 10 mL of the aqueous extract through the column and collected eluate. For the next cleanup step, the second SPE cartridge (crosslinked polystyrene/poly-DVB SPE column, 500 mg/6 mL) was conditioned with 5 mL methanol and 5 mL water. Passed the eluate from the previous step entirely through the column. Rinsed the loaded cartridge once with 4 mL water and discarded the rinsing solvent. Eluted the acrylamide with 2 mL of 60% methanol in water. Collected the sample and transferred into an evaporation tube. Placed the tube in an evaporator at a temperature no higher than 40 °C to remove the methanol. Evaporated until the final volume was 0.5–0.8 mL using a gentle flow of nitrogen. Transferred the final sample into an autosampler vial and analyzed by LC-MS/MS.

一貫したカラム間の性能

水系100%移動相に耐えるよう設計されたRestek Allure Acrylamideガードおよび分析カラムは分析毎の,そしてカラム間でも堅牢な性能を発揮します。古いカラムから新しいAllure Acrylamideカラムへ交換する時が来たとき,厳格な製造手順と品質テストによってアクリルアミド分析で同じ性能が得られることを保証します(図4)。

図 4: 堅牢な逆相Allure Acrylamide LCカラムは,カラム間およびロット間で再現性のある結果を提供します。

PeaksConc.
(ng/mL)
PrecursorProduct
1.Acrylamide-d3 (IS)20075.158.1
2.Acrylamide20072.155.1
Lot-to-Lot Reproducibility of Allure Acrylamide
LC_FS0534
ColumnAllure Acrylamide (cat.# 9167552)
Dimensions:50 mm x 2.1 mm ID
Particle Size:5 µm
Pore Size:60 Å
Guard Column:Allure Acrylamide 10 mm, 2.1 mm ID, 5 µm (cat.# 916750212)
Temp.:22 °C
SampleAcrylamide (cat.# 30494)
Diluent:Water
Inj. Vol.:10 µL
Mobile Phase
A:0.001% Formic acid in water
B:0.001% Formic acid in acetonitrile
Time (min)Flow (mL/min)%A%B
0.000.41000
1.000.41000
2.000.41090
2.010.41000
5.500.41000
DetectorMS/MS
Ion Mode:ESI+
Mode:MRM
InstrumentHPLC

アクリルアミド分析のためのより良いソリューション

EN 16618:2015で用いられているPGCカラムはアクリルアミドを十分に保持しますが,共抽出したマトリックス成分を強く保持するため分析毎に長い平衡時間が必要で,カラムの耐久性が短くなります。Allure Acrylamideカラムを使用すると,アクリルアミドの十分な保持を確保しながら,マトリックス化合物をより効率的かつ効果的に洗浄することができるため,全体的にアクリルアミド分析を高速化することができます。その結果,システム適合性の要件をより多検体注入にわたり維持できるため,メンテナンスが必要になる前により多くのサンプルを分析できます。Allure Acrylamide分析カラム及びガードカートリッジと重水素化内部標準の組み合わせにより,分析ラボは短時間かつ少ないカラム本数でより多くのサンプルを分析することができ、生産性と収益性の向上へとつながります。

References

[1] J.A.G. Roach, D. Andrzejewski, M.L. Gay, D. Nortrup, S.M. Musser, Rugged LC-MS/MS survey analysis for acrylamide in foods, J. Agric. Food Chem. 51 (2003) 7547−7554. https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf0346354